Open

1/2
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

Open

駅の近くから、道外れにあるカフェ。 「Your Word」というカフェがある。 7時に丁度にOpenする。 カランカランと扉の上に掛けてあるベルがなる。 「いらっしゃいませ」 1人目のお客様は、黒いスーツを着てメガネをかけ、見るからに仕事が出来そうで、雰囲気は少し厳しい感じの社会人男性。 初めて来るお客様だ。 「お好きな席へどうぞ」 「ありがとうございます」 その男性は、入り口に近い席に座った。 メニューをとり、何を頼むか悩んでいる… 数分悩んだあと、 「すいません」 男性に呼ばれ、注文を聞きに行く 「はい、メニューお決まりですか?」 「この、卵サンドイッチセットをお願いします。」 そう言って、メニューに載っている写真に指を指す。 「かしこまりました。少々お待ちください」 僕の読みは、当たったようだ。 一見、スーツを着て、メガネをかけ、厳しそうな雰囲気のある男性は、一杯のブラックコーヒーを飲んで、出勤する。まさに憧れの大人のような世界で生きている感じだ。 けど、違う。彼の世界は希望に溢れ、輝いている。濁りがまったくない。 自分を隠そうと、思ってない。 だから、彼は卵サンドイッチセットを選んだ。 しかし、本当に自分を隠そうなんて思っておらずただ、一杯のブラックコーヒーを飲むお客様も勿論おられる。 ただ前に、彼と似たような男性がお店に来ていた。 彼は一杯のブラックコーヒーを飲んで、出勤していった。そして、彼の世界は濁っていた。 わざわざ、苦くて、苦手なブラックコーヒーを飲んで、自分を隠していた。 まさに、ブラックコーヒーを飲んで大人の世界で生きているように見せるために…。 何故、自分を隠すのか…。 僕にそれは分からない。 僕はただ、お客様がどんな世界で生きているのかが、見えるだけだ。 「お待たせしました。卵サンドイッチセットです。」 「ありがとうございます」 テーブルに卵サンドイッチセットを置き、僕はその場を去る。 男性は、黙々と食べている。 「ごちそうさま」 食べ終わった男性は、会計のためレジに方に歩いてくる。 「お会計…550円です。」 「えっと…1000円でお願いします」 「分かりました」 この時、僕は初めてお客様と会話をする。 「あなたの会社は、とても良いところなんでしょうね。あなたの世界は、輝いている。仕事場の後輩や先輩、同僚にも親しまれ、頼りにされてるんでしょうね。」 「……は?」 男性は、何を言っているんだという顔をしている。 「いえ、おつり450円です。」 男性の手のひらにおつりである小銭を置く。 「えっ…あぁ…」 少し戸惑いながらも、男性は小銭を受けとる。 扉に向かう男性を見送るため、自分も扉の方に向かう。 まだ朝のため、お客様はこの方しかいないため、入り口まで見送る。 男性はちらちらと僕を見ながら、扉を開け、外へ出ていった。 「ありがとうございました」 お辞儀をして、男性を見送るため。 男性は軽く会釈した後、たくさんの人が歩いている歩道へと、向かった。 歩道に入った瞬間、男性の輝いた世界は人混みの中に消えていくように、消えていった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!