『なんだって、こんなことに』

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アカラ。 まだガキの頃、孤児で行き倒れていた自分の身元引受人になったお節介天使。 正確に言うと引き取ったのは奴の両親になるんだろう、奴とは同い年だし。 以来奴とはいわゆる幼なじみの関係だ。 引き取られて数年で家を出た。 居心地が悪かった……訳じゃないけど。 奴は名門の天使の御令嬢だから。 悪魔一般よりある意味まだ下である自分の存在は、奴のお家柄には邪魔だろう。 自分、そこまで空気が読めない訳じゃない。 本当はその時に遠くに行ってしまうべきだった、 だけど出来なかった。……アカラが、滅多なことでは泣かない奴が、ぼろぼろぼろぼろ泣きやがったから、しかも無言で。 言葉では引き止めないくせに大泣きされてしまったのだ。 それで出ていくタイミングを逃してしまった自分は、奴の家の近くのあばら家に引っ越した。 結局は三食三度、未だに奴の家でご馳走になっている始末だ。 あばら家には、あくまで寝るためだけに帰るのがルーティンになっている。 アカラの両親は、二つの国が和平を結んだ際にかなりの功績があった。 早い話がお偉方の家系だったから、アカラは親の七光りで十歳かそこらでクロス・ピースの治安維持部隊に入隊が決まった。 自分はアカラの邪魔にならないようにと隠れてたのにあの馬鹿、自分のことをグイグイと引っ張っていきやがってからに。 クロス・ピースなんて、大半が天使で構成されている。 悪魔は元来排他主義だし、馴れ合いなんて好まない。 その性質上クロス・ピースに悪魔が参加しないのは仕方ない面もあったけれど、天使は天使でいけ好かない野郎ばっかりだ。 この世は天使が中心でまわっていると思い込んでいる残念な大人は、一体どれほどいるだろう。 悪魔が蔑視される世界に、自分は日々辟易していた。
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