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「紹介したい人がいるの」
晩ご飯のハンバーグを食べていると、高校生の娘がこんな言葉を発した。彼女の顔を見ると、照れたような表情を浮かべている。
「紹介したい人?」
俺が聞くと、コクリとうなずく。
「今お付き合いしてる男性がいるの」
お付き合い。俺はハンマーで頭を殴られたような衝撃を受ける。
そりゃあ高校生にもなれば、お付き合いする男性の一人や二人でてきても不思議でないだろう。しかし、早くに妻を亡くし、男手ひとつで育ててきた娘が、急に彼氏を連れてくるとなると焦らないわけがない。俺は深く息を吸い、心を落ち着かせる。
「そ、そそ、それで、その男はど、どんな人なんだ」
俺はいかにも冷静という口調で言う。
「えっとね、コロ助さんは、すっごい優しくて、カッコよくて」
「ちょっと待て。今、コロ助って言わなかったか?」
「うん。そうだよ。コロ助さんって言うの」
「それは、ネット上の名前か何かか。それとも芸名か?」
「ううん。本名だよ」
俺は言葉を失う。いくらキラキラネームが流行ってるからって、コロ助はないんじゃないか。
「じゃあ日曜日に駅前のスターベックスでお願いね」
娘の言葉にしぶしぶうなずく。コロ助。そんな名前の人間がまともだと思えない。もしかしたらとんでもない頭のいかれたやつが来るんじゃないか。不安は大きくなるばかりだった。
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