3,英断

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3,英断

俺の父親はこう言っていた「物事は好きか嫌いかで決めろ」 俺の母親は言った「嫌なことは早く終わらせなさい。」 これにより俺は今人生で1番悩むことになっている。サッカーは好きだ大好きだ。5歳から始め、小学校では地域の大会で優秀選手賞をもらっていた。中学校に入った時も3年生の先輩から期待されていた。しかしそれを良く思わない2年の先輩に何かにつけて嫌がらせを受けた。あの2年共は嫌いだった。そんなに悔しけりゃ実力を示せ。その精神で2年の先輩とのレギュラー争いを制していた。するとなぜか同年代までもが俺を避け始めた。パスは回ってくることは少なくなり、ボールを持ってパスをすることはこんなに苦しいのかと、周りの非協力的な動きに打ちのめされたこともあった。こんなのがサッカーなのかと思い、自分のサッカーを、ある日殺した。あらゆる自分の個性。その逆を実行する。ボールを持ったらまずドリブルの精神からまず叩き直した。まずパス。その後チームのためにどこにパスすべきかどこに人がいないからそこのスペースを埋めるのか何が今自分に、チームのためにできるのか。これをまず先に考えた。自分の好きなことをするのはここでは許されない。 そして監督から 「お前、なんか消えたな。」 衝撃だった。何が消えたのか、言われなくてもわかった。自分に何が欠落したのかよくわかった。言い返す言葉も何も無い。 だが俺は間違ってない。 このチームで生き残るにはこの自己犠牲無くしてはダメだこの精神で3年まで走り続けてきた。最後の最後くらい好きなことしてチームを勝たせたい。その結果が負け、そして賛否両論。中学生の俺には少し荷が重いそんな気もした。たかだか県大会の1選手がちょっと目立っただけでこうもまた批判なのか。地獄だ。どこに行ったって、サッカーしてりゃそりゃ不満をぶちまけられる。加賀谷のいる高校に行くことに関して、父と母の言葉がよぎる。サッカーは好きだ、でもあの男がいるチームにまた俺の居場所はあるのだろうか。そんなに直ぐに決断して、文字通り終わらせることなんてできるだろうか。俺は自分自身に「英断」をずっと迫っていた。
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