4,選ばれる理由

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4,選ばれる理由

その日はやってきた。俺は俺自身の「英断」を引っさげて加賀谷の元に向かった。 「やぁ、こんにちは、」 この男はあれだけ俺の気持ちを切り裂いておいて笑っている。強豪校の監督はこうなのか。 「君のことを選んだのには理由があってね。僕達は影が欲しいんだ。ものをきれいにめせるには時としてそれを遮らんとする影が必要な時がある。目立つものの中に1つ目立たないものを入れることにより目立っていたものがより引き立つそれを体現する影が欲しかった。」 なるほど、まんまだな。お前は常に影であれ。おれで生きていけ。それがお前のアイデンティティなんだと言われている。そしてこの前のあの試合で俺は影から光に出た。影を作ることをやめ、光を作り出した。それもとびきりな。そこにこの男は困惑したのだろう。 「君があんな顔を覗かせることなんてほとんどなかったじゃないか。ほんとに驚いたが興味深かった。影を持ちうるものは時に誰よりも光を放つ。君から教えてもらったよ。感謝する。お願いだ、うちに来てくれ。君のこれからを俺に近くで見せてくれ。」 この言葉に俺は衝撃を受けた。感謝と、うちに来てくれという懇願。俺はこの男の底知れなさを知った。 この人は俺を知ろうとしている。俺はこの男にサッカーをかけてみたい。1度は殺した俺のスタイルを、生き返らせる。いや、新しい俺のスタイルと共存させる。これをしてくれとこの男は俺に頼んでいる。この男に俺は懸けてサッカーをしていきたい。直感の中で冷静に俺は考えた。「俺はこの男の元へ行きたい」と。 そんなことを考えていた10年前の私。まだこのアイデンティティを使用している。 だから私は加賀谷という男を今でも信じている。
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