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「ごめん、待った?」
地面に落ちた桜の花びらを拾って見つめていると、公園の入口から咲子の声が聞こえてくる。顔を上げると、ハンドタオルで汗を拭いながら向かってくるところだった。
「今日、暑くない? ほんまあの坂、地獄やわ」
そう言いながら俺の隣に座った咲子は、「ボウリングの前にいきなり誘ってごめんね。でも、もう逃げるのは止めにしようと思ってさ」と口にする。
一昨日とは雰囲気が違う。何かを覚悟した口調だ。
一昨日、咲子は浩紀の顔が消えたと泣きながら電話を掛けてきた。どうすればいいと泣き続けるだけの咲子。気休めの言葉を掛けても意味がないと思った俺は、咲子が抱えている不安を共有することを決めた。
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