appassionato

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4月17日、金曜日。 8時30分、コンクール当日。 私は、ステージ裏で緊張と戦っていた。 皆同じだろうけど。 「向日葵!」 その時、クラリネットを持った美乃里が、急に背中を叩く。 「痛……もちょっと優しく叩いてよ。このバカ力!」 「ごめんごめん。でも、少し緊張ほぐれたでしょ?演奏も大事だけど、笑顔を大事だよ。」 「美乃里……ありがとう」 「良いって!じゃあうちちょっと練習してくるね」 そう言って、美乃里は練習室へと向かった。 コンクールは、クラス順の出席番号順で行う。 自分は、1年2組。出席番号は8番。 そこそこ順番が早い。 美乃里のお陰で少し緊張はほぐれたが、先生たちの目線が怖い。 とにかく期待の眼差し。 本当に止めてほしい。 聞きたい…… 上条先輩のバイオリンの音色が聞きたい。
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