appassionato

2/30
前へ
/185ページ
次へ
10時。コンクールが始まった。 1組から順番に演奏が始まる。 皆レベルが高い。 そんな中特に、同じピアノ専攻の人たちの演奏をまじまじと見る。 心奪われる音色。手元や表情は見えないが、後ろ姿でも分かる。 皆演奏を楽しんでる。 そして、1組の演奏が終わった。 次は、2組だ。 最初に演奏するのは美乃里。 私は、美乃里のもとへ向かう。 美乃里の手は震えている。 私は、美乃里の背中を叩く。 「痛、向日葵!」 「ごめんごめん。でも、少し緊張ほぐれてでしょ?演奏も大事だけど、笑顔も大事だよ。」 さっき美乃里が私に言ってくれたことをそのままお返しする。 「あっ、うちのセリフ……まぁありがとう向日葵。じゃあ行ってくるね」 美乃里は、アナウンスとともにアクティングエリアに向かった。 相変わらず、性格と異なって切なくて、何故か救いの手を伸ばしてあげたくなるような音色。 初めて聞いたときは、驚いた。 もっと心明るくなるような、音色だと思っていた。 でも、この音色が美乃里にはあってる気がする。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加