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絵馬には、とある絵本の名前と数字が書かれていた。
ご丁寧に最寄りの図書館への行き方も書き添えてあったけれど、ここから徒歩5分、自転車ならもっと近い。むしろこの神社よりはメジャーな施設なので大丈夫。
絵本の名前と数字をスマホに撮って、図書館に向かう。段々、心得てきた。つまり「この本を探して指示された数字のページを開け」と。
平日の昼下がり。図書館の中には先ほどの喫茶店と同様に、ゆったりとした時間が流れていた。一番人気があるのは新聞コーナー。備え付けのデスクスペースは、難しそうな本を何冊も積み上げてメモを取っている人や参考書を広げている学生さんらしき人でまばらに埋まっている。
結構ライトな雑誌なんかも、最新号でなければ借りられるものなんだな。普段あまり入らないから意外と新鮮だ。
絵本なら探しやすいと踏んで、書架の前に立ってみたものの、並び方が著者順だったので、絵馬で指示されたタイトルだけでは探しきれそうもない。検索システムの端末機の前に戻ってタイトルから検索することにする。
「ええと、ち、り、ん、の、す、ず…」
ああ、これ、頭がパンなヒーローで有名なあの作者の本なんだ。
もういちど絵本コーナーに戻って「や」行を当たると、目当ての絵本はすぐに見つかった。
指定されたページを開くと、そこにはやはり薄い茶封筒。
そっと取り出してポケットに入れ、せっかくなので絵本も読んでみることにする。
『(冒頭)ちりんのすずでおもいだす…………』
『……』
こんなにかなしいお話ってありますか?
頭のパンをちぎって与えるどころじゃないせつなさ。
未読の方は是非一度、お手に取ってみて下さい。
読後感が悪いというわけではなかったものの、生き物はどうして食うものと食われるものに分かたれるのか、愛と憎しみは表裏一体のものなのかetc…ついこの世の摂理に思いを馳せながら図書館を後にする。
さて。次の封筒に入っていたのは「フラワーショップはなや」と書かれた手作りのチケットだった。喫茶店の時と同様にそう遠くない場所を示す地図が印刷され、有効期限はやはり今日限り。
ということは、次のクエストは人と話すタイプなんだな。
今度こそ"これ"がなんなのか、聞いてみようか。
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