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「いらっしゃいませー」
南北の大通りから一本東。店舗通りと住宅街との境目に建つ「はなや」というシンプルな屋号の花屋に入ると、ガーデニングエプロンが良く似合う妙齢の女性店員が朗らかに迎えてくれた。
「あの、これってここでいいんですか?」
きっとこのお店も"これ"の関係者に違いない。そう確信していたので、喫茶店の時よりは堂々とチケットが出せた。
「ハイ、ここですよー。お花一本プレゼントでー、こちらのチケットですとお花は選べないんですが、一応、苦手なお花とかってありますー?」
花に好きとか嫌いとか考えたこともなかったな。
「特にないです」
「ではご用意しますねー」
店員さんはバケツに浸かった色とりどりの花の中から一本を抜き出すと、作業台で包み始めた。
「あの」
「ハイ?」
返事は帰ってきたものの、手元は休まずに作業を続けている。
「このチケットってなんなんですか?」
「お客さん、××××サイトで■■■を買ったひとですよね?」
「これ、色んなお店が提携してまちあるきを楽しむサービスとかなんですか?」
「いっやぁー…なんていうか、■■■、ですからねぇ」
店員さんは、子供が他愛ないわるだくみをしているような顔でにやりと笑った。
「ハイ、こちらピンクのガーベラ、花言葉は"感謝"です」
渡されたのは、クラフト紙でくるりと巻かれた一本の花。
「最後までいったらちゃんとわかりますよ。お気をつけてー」
ピンクのガーベラ…。
鮮やかすぎないピンク色と、ラッピングのクラフト紙のサンドベージュとの対比がオシャレだ。自転車でどうやって運ぼうかな。ドリンクホルダーに固定しようと中を覗き込むと、メッセージカードが差し込まれていた。
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