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当日。
約束の時間より少し早めに、現地に到着した。
そもそもフリマサイトで買い物をするのも初めてなら、ネット経由で誰かに会うのも初めてなので、どうしても緊張してしまう。
それっぽい人が近づいてくると、ソワソワしちゃったりして。
デートか。出会い系か。
ちょうど11時になった。
しかし、それらしい人はいない。
スマホでサイトのメッセージ欄を確認してみるけれど、新着もない。
まさか、詐欺…?
いやいや、まだお金渡してないし。
過去の評価欄にも「来なかった」みたいな書き込みは無かったはず。
ぐるりと見渡していると、ふと黒いキャップが目に留まった。
そう。その"黒いキャップの人"は、確かに、さっきからずっとそこにいるけれど。
しかし。
5歳くらいの女の子?
いやいやまさか。
選択肢から外して、もう一度スマホを確認しようとしたその時。
視界の端で、その幼女が「すっ」と渦巻きキャンディーを掲げてみせるのが、映った。
"黒いキャップ"、そして"飴"。
まさかまさかいやいやいやいや、とそれでも信じられないでいると、幼女はトコトコと近づいてきて「tomoro75さんでしゅか?」こちらのIDを口にした。
「どーじょ」
そして、茶封筒を差し出してくる。
反射的に受け取ると、今度はもみじ饅頭みたいな小さな手のひらを突き出してきた。
"購入代金は現地スタッフにお渡しください"
現地スタッフかぁ…。
用意してきた代金の封筒を渡すと、彼女は封を開け「なちゅめしゃんがさんまい。たしかに!」と非常におとなっぽく中身を改め、「あぃがとーございましたー!」と叫んで走り去っていった。
『公園で』『幼女と』『封筒に入った現金』のやり取り。
…事案になるやつじゃないだろうな、コレ。
少し不安になった。
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