お受け取りには丸1日かかります

6/16

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
※ ■■駅は地域の主要駅なので、平日の昼間とは言え、そこそこ人の行き交いはあった。なにもやましくはないはずだけれど、なんとなく裏取引な気分で、まばらな人込みをこそこそとすり抜けてロッカーへ向かう。 「0075番…ここか」 拳銃or赤ちゃんor白い小麦粉様のなにか…。 得体のしれないなにかの入ったロッカーを開けるだなんて。まるで昭和のスパイ映画のようなアナクロ感に、妙な想像が沸き立ってしまう。 それでも開けてみようと思えるのはひとえに、過去の評価欄の☀マークたちのおかげだった。 全然ダーティーじゃない、大丈夫大丈夫。評価って大事。 鍵を差し入れて回すと、軽やかにカチンと音がした。 開かれた小さなスチールの空間には果たして。 ――紙切れが1枚入っていた。 ピンクの薄いA4コピー用紙。横に4分割したチケット状のもの。 まさか肩たたき券とか言わないよね…? 手作り感あふれるチケットには「ツカダ珈琲 ドリンクチケット」「有効期限:□月〇×日のみ」とゴシック体で印字され、やる気も個性もない、のほほんとした絵柄で湯気のあがるコーヒーカップのイラストが添えられている。 3000円のコーヒー…ってことですか? 世間には、一杯が一万円を超える希少なコーヒーだってあるという。よしんばこれが、そんな高級コーヒーがお得に飲める権利だったとしても、購入者がコーヒー飲めない人だったらどうするんですか…? 若干がっかりしながらもチケットを裏返すと、お店の住所と簡単な地図が印刷されていた。市役所近くの古い商店街の一角。ああ、あそこか。前を通ったことは何度もあるけれど、入ったことはない、レトロな個人経営の喫茶店…。 まあ、行ってみますか。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加