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※ かららん、とドアベルが鳴る。 店内は濃い木目調で統一されている。高級感は無いけれど、昭和の高級志向です、といった内装だ。古びてはいるけれどこざっぱりとしていて、悪くない。というか落ち着く。 「いらっしゃい」 70代くらいだろうか。若い頃はかっこよかったのかも、と思わせるシュッとしたご老体のマスターが渋い声で迎えてくれた。 「あの…これって使えます?」 及び腰でチケットを差し出すと、マスターの表情が心なしか和らいだ。こちらも少しほっとする。 「ああハイハイ、使えますよ。コーヒー以外のドリンクにもできますが」 「いえ、コーヒーで…このスペシャルブレンドでお願いします」 窓際の席を選び、色褪せた赤いビロード張りのソファに腰かけた。 窓の外を高齢のご婦人が、カートを押してゆっくりと歩いていく。カートに下げられたスーパーの袋を見て、うちに卵が無かったことを思い出す。帰りにスーパーでも寄るかな…。 店内には初老の男性が1人、早めの昼食と思しきナポリタンを食べているだけで、非常に静かな空気が流れている。今回のコレはなんだったんだろうな…お店と提携したサービス? しかしあの商品名とこの喫茶店に別段ピンとくるものもない。 コーヒーが来たら聞いてみようか。 「お待たせしました」 ほどなくマスターがやってきて、シュガーポットとシロップ、次いでコーヒーを置いた。そして… 「こちら例のものになります」 スッ、とコーヒーの横にすべらせたのは、伝票の代わりにまたもや薄い茶封筒だった。
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