白い塔の聖女

1/5
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

白い塔の聖女

 大昔、予言者が言った。  いつか強い魔物が現れて、この国を亡ぼすと。故に『聖女』を召喚し『勇者』『賢者』はその日に備えなさいって。予言者を崇めるこの国じゃ、誰もが知ってる有名な話。僕はどちらかと言えば『強い魔物』がどんなやつなのか……そっちの方が気になった。大人たちは違うみたいだけどさ。  僕は『勇者』だ。周りの人がそう言ってるから、将来、僕は『勇者』になるのだろう。そして塔の上にいるのは『聖女』だ。予言者の言葉通り異世界から召喚された。  珍しい黒い髪と黒い瞳の聖女は、まだこの国の言葉を話せない。会うと異世界の言葉で何かを言うけど、さっぱりわからない。とにかく僕よりずっと大人の癖に、泣き叫んだり物を壊したりするので『聖女』は『白い塔』のてっぺんに閉じ込められた。  ときどき塔から抜け出そうとするので、賢者が魔法で『白い塔』から出れなくした。今は、僕と『賢者』しか塔に入れない。  今日は、ご飯や着替えを持っていく日なので、パンや焼き菓子、水に野菜スープ鍋に着替えが入った袋を高い塔の上に運んでいる。  ──正直疲れる。  なにせ塔のてっぺんまで七十五段。それを二往復しないと三日分の食料を運べない。魔法で運べたらいいのだけど、塔の中では魔法が使えないから、自力で階段を上っていくしかない。ものすごい重労働だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!