襲われてやるよ

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「いつから、付き合ってたの?」 「えっと、」 「クリスマスイヴ。まあ、初めてこいつが俺んちに泊まったのが、だけど」 「・・・・幹[ミキ]くん、ちょっとそれ、内緒にしてって言ったのに」 項垂れる男の横で、お友達は目を輝かせている。 「すみません、同じ物をください」 いたたまれないのか由美亜が通りかかったボーイを呼び止めて、アイスティーみたいな酒のお代わりを頼んだ。 「ひどい、幹くん」 タクシーの後部座席で恨み言を言われた。 「いや、『彼氏の振りして会ってくれ』って話だったろ?」 「だからって、あんな」 「俺はひとつも嘘は言ってない。付き合ってるって嘘以外は」 「・・・・アタシが、襲っただなんて」 「事実だ。俺にはトラウマになって」 「3歳の時でしょ? 覚えてないもん」 「俺は6歳だったが、あまりにショックだったから忘れられん。いきなりズボン下げられて」 「ごっ、ごめんって、何度も謝った話じゃない!」 そう。 由美亜に弟が生まれて、オムツの中が自分と違うと知ったこいつは隣に住んでた俺のパンツの中を覗きに走って来た。 年少組のバッヂを付けた由美亜を、苛めちゃ駄目だと親からさんざん言われていた俺は、されるがままになったのだ。 「ホクロなんて、」 「それもお前だぞ、ホクロ数えてって言ったの。ウチの風呂場で」 覚えている俺を責めるな。うしろめたくなるじゃないか。 「あー、ちっちゃい頃のアタシを消し去りたい」 「それは勿体ない。可愛かったぞ、それなりに」 「それなりに、って」 まあ、天使のようだったとは言えないが。天真爛漫で、可愛かったのは確かだ。柔らかな髪をふたつに括って、片手にお気に入りのぬいぐるみ持って、 「みきちゃーん、あそぉんでぇー」と、よく勝手にウチの階段を上がってきた。 小学生になっても、4年生で近所に仲の良い女の子が出来るまでは、この俺が一番近くに居たんだ。
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