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「まあ、・・・とにかく今日はありがとう。正直困ってたから助かった」
あの岡田という同期に、どういうわけか相思相愛だと思い込まれつきまとわれだした。それは隣の部署でも聞こえてきた話で、由美亜の教育係だった同期からも相談されていたんだ。
「職場で猫被ってるからだろ?」
「猫なんか被ってないもん。男の人には慣れてないから」
「嘘吐け。合コン行きまくってたくせに」
「・・・・なんで知ってるのよ」
「母親同士の情報交換。お前も知ってるだろ?」
由美亜の家と俺の実家は隣同士だ。親同士かなり仲が良い。
「幹くんの歴代彼女のランキングなら知ってるよ? 最近はあまり上位に食い込む人が居ないって、おばさんが」
「ほぼ会わせてないのに、何を根拠にランク付けするんだ?」
「息子のお出かけや外泊の頻度で」
「チ、・・・・1人暮らしの息子ストーキングしてんなよな」
「マンション近いもんね」
「お前も1人暮らしするんだろ?」
由美亜の兄貴は俺の1つ上で昨年結婚した。両親は庭を潰して別棟を建て、敷地内同居になったのだが。
「うるさい小姑になりたくないのよね」
義理の姉となったのは由美亜の母の教え子で、少々「甘えた」なのだそうだ。
「お母さんは大丈夫みたいだけど、アタシはちょっと・・・・距離を置いた方が良いかな、って」
「良いんじゃないか? お前のためにも。実家じゃオトコ呼べないだろう」
「 っ、」
からかうと口を尖らせて睨み付けてくる。
けれど今度はそれから視線を落として、
「居ないよ、・・・オトコなんて」
と若干小さな声を落とした。
「知ってる。居たら今日だって俺に頼まないよな」
よく合コンに行ってたのは聞いたが、家族にオトコを紹介したこともないらしい。ただ外泊くらいはしていたそうだから、彼氏が居なかったわけじゃあるまい。
隣で、眠いのか大人しくなった由美亜を横目で見る。柔らかな髪は肩の下でゆるくカールしてるが、これが天然なのも知っている。少しは化粧を覚えたが、口紅が落ちても紅い唇は白い肌に映えてじゅうぶん色っぽい。
・・・・普通に可愛いし、頭も悪くないし、母親に仕込まれて家事も出来る。良いオンナに育ったと思う。
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