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「そうだな・・・・目立つのが尻に1個ある。右の、―ったぁ!!」
バシンッと叩かれて腕をさする。通路を挟んだ隣で飲んでるオバサ、もとい、お姉サマ達が振り向いたが、直ぐに歓談に戻った。
すんません、うるさくして。
隣を見ると、でっかい目を釣り上げてる。睨んでいるつもりらしい。
「あ。私知ってる。夏に海行ったとき由美亜ビキニ着てて。背中に日焼け止め塗ってあげてるときチラッと見たわ」
斜め前に座った由美亜の友達がストローから口を離して言った。正面に座る男は口を引き結び、俺と由美亜の間で視線を行き来させている。それでも気を取り直して
「日菜ちゃんが知ってるんなら、」
「あと、左胸の、」
パチン! と、今度は頬を叩かれた。結構な力で。
「イッてぇ、」
「ゆっ、指差さないでよっ、変態っ!!、」
指したのは俺の胸だが。
まあ、乳首に近い場所だから説明されたくはないのだろう。真っ赤になって怒っている。
「変態って。俺を襲ったお前に言われたくない」
頬を摩りながら言うと
「やだぁ、佐原さんを襲ったのー? 由美亜ったら、いくら幼馴染みだからって」
「襲ってないわよっ」
「お前が覚えてないだけだ」
「アハハ、酔ってたの? 由美亜」
「そっ、―― そう、らしい、かな・・・」
ジョッキを傾けつつ見ると、真っ赤なまま口元を引きつらせている由美亜。最近は大人びた顔ばかり見せられていたから、面白い。
「ゆ、由美亜ちゃんが、男を襲うなんて、」
「――っ、も、もう良いかな? 岡田くん」
そうだよ岡田。
お前が『本当に付き合ってるなら証拠を』って言い出したんだからな。そのくせ『キスでもしてみせようか?』と言ったら首をぶんぶん振って『他の! 例えば彼氏しか知りえない・・・・躯にあるホクロとか』って。だから教えただけなのに。
睨むな、そんなガキみたいに。
そんなだから由美亜に相手にされないんだ。
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