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どうしようとおろおろしていると、金髪の男子が、
「あーあ、スマホ落ちちゃった。壊れたらどうしてくれんの?」
と言いながら、スマホを拾い、
「あ、ほら、やっぱ液晶割れてんじゃん」
とわたしに画面を見せた。見事なヒビが入っている。わたしは青くなり、
「ご、ごめんなさいっ」
と深く頭を下げた。
「もちろん、弁償してくれるよね?」
スマホの弁償なんて、きっと高いに違いない。
「い、いくらですか?」
おずおずと問いかけると、
「8万円」
とびっくりな金額が返ってきて、わたしは呆然とした。そんな大金、持っていない。
「そんなにお金ないです……」
半泣きで答えたら、
「彼氏、持ってないの?」
今度は梶君に矛先が向いた。
黙って会話を聞いていた梶君は、おもむろに口を開くと、
「そのスマホ、最初から壊れてましたよね。ぶつかって落としたふりをして、相手を脅して弁償させる、いわゆる詐欺ですよね」
と断言した。金髪の男子と、その両側の不良男子2人の目が鋭くなった。
「そっちからぶつかってきて、物を壊しておいて、よくそんなことが言えるな」
「……いや、ちょっと待て、お前どっかで…………」
噛みつこうとした金髪の男子を、開襟シャツの男子が止めた。梶君の方へ顔を寄せ、じっと見つめる。梶君は身を引いたけれど、開襟シャツの男子は、梶君の髪を上げるように頭を掴んだ。
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