5.「代わりに打つ!」

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5.「代わりに打つ!」

 文化祭が終わり、いつもの日々が戻って来た。けれど、文化祭前と後とで、変わったことが少しだけある。梶君がプロ作家であることが、一部の生徒にバレたのだ。文化祭の日、百瀬君とケンカをしたわたしの噂が、漫画研究部の部員から広がってしまったらしい。 「ごめんね、梶君……」  文化祭後の部活で、わたしはあらためて梶君に謝った。梶君が『霧島悠』であるということまではバレていないものの、何らかの本を出版しているプロ作家であるということは、知られてしまった。  わたしの謝罪を聞いて、デジタルメモのキーボードを叩いていた梶君が顔を上げた。 「何を謝ってるの?蒼井さん」 「いや、だって、わたしのせいで、梶君がプロ作家だってことバレちゃって……」 「あれは蒼井さんのせいというより、百瀬のせいだろ。それに、学校でバレようが、気にしてないし」  梶君は大したことじゃないと言うように、軽い口調で言った。   意外な言葉に、目を瞬かせる。 「気にして……ないの?」  「梶君はそのことで中学時代に嫌な思いをしたはずなのに」と思って問い返すと、 「なんだか今は、誰に何を言われてもいいや、って気持ちになってる。……蒼井さんのおかげかな」 梶君はそう言って、にこりと微笑んだ。 (わたしのおかげ……)  そう言われるのは、とても嬉しい。
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