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「うん。そうだよ。来月、締め切り」
梶君はあっさりと肯定した。わたしは梶君の方へ身を乗り出すと、
「完成したら読ませて欲しい!」
と勢い込んで言った。
「『霧島悠』の新作、読みたい!」
すると梶君は、
「発売前の小説だからなぁ……。そもそも、新作が出るのも、まだ未発表だし」
と困った顔をした。やはり、問題があるのかもしれない。
「ああ~、やっぱり無理かぁ。それはそうだよね。ごめん」
わたしは椅子の背もたれに体を預けると、溜息をついた。
(あわよくば、真っ先に読ませてもらえたらいいなって思っていたのに)
梶君はがっかりしているわたしを見て苦笑した。
「……そんなに読みたいの?」
「読みたいよ。だって、好きなんだもの」
そう言ったら、梶君は息を飲んだ後、ふいと横を向いた。
「……好きって…………」
ぼそっと声が聞こえてくる。
「あ、いや、好きって言うのは、『霧島悠』の小説が好きって意味で……」
なぜかわたしは動揺し、両手を激しく振った。
「…………」
「…………」
お互いに、無言になる。
最近、わたしたちは、こんな風にギクシャクとした雰囲気になることがある。
「あ、あのさ……」
気まずくなってしまった雰囲気を壊すように、梶君が口を開いた。
「今週の日曜日、何か予定ある?」
「今週の日曜日?特にないけど……」
「なんだろう」と思いながら答えると、
「俺と一緒に出かけない?ちょっと行きたいイベントがあって。たぶん、蒼井さんも楽しめると思う」
梶君はそう言ってわたしを誘った。
「イベントって?」
「それは……行ってからのお楽しみってことにしとく」
梶君は唇に指を当てると、悪戯っぽい表情で微笑んだ。
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