5.「代わりに打つ!」

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 日曜日になり、わたしはドキドキしながら梶君との待ち合わせ場所である駅前の本屋に向かっていた。 (今日のわたしの格好、変じゃないかな)  わたしは、ダッフルコートの下に着ている、タータンチェックの巻きスカートのことを思った。頭にかぶったベレー帽を整え直す。男子と2人でどこかへ行くなんて初めてのことで、何を着て行っていいのか分からず、昨夜は梨乃に相談しながら服を選んだ。以前、梨乃が斎木君とのデートの時に、散々、着て行く服に悩んでいた気持ちが分かった気がした。  本屋に辿り着き、自動扉から店内に入ると、すぐそばの雑誌コーナーに梶君が立っていた。手に、週間漫画雑誌を持っている。どうやら、立ち読みをしていたようだ。 「おはよう、梶君。梶君も漫画を読むんだね」  いつも難しい本を読んでいるイメージだったので、新鮮な気持ちでそう言うと、梶君は、 「おはよう、蒼井さん。漫画は好きだよ。流行りの勉強にもなるしね」 と答えた。 「じゃあ、行こうか」  漫画雑誌を本棚に戻すと、梶君はわたしを促して歩き出した。 「会場は隣町なんだ。だから、電車に乗って行く」   切符を買って改札口を入り、梶君についてホームへと向かうと、ちょうど各駅停車の電車が入って来た。日曜日だけれど、時間帯のせいか、比較的空いている車両に乗り込む。
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