5.「代わりに打つ!」

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「先生が今でも小説を書いているなんて意外だった」  わたしが梶君に話を振ると、梶君は、 「そう?」 と首を傾げた。 「俺はそんなに意外に思わなかったけどな。松峰先生、現代文担当だし、本も好きだし、それに、前の文芸部の顧問の先生が定年退職した後、次は誰が顧問をするんだって話になった時、新任だったのに立候補したって聞いた。――創作って、究極、紙とペンさえあれば出来る趣味だから、社会人でも、隙間時間で書けるだろうしね。それに、今はスマホもあるから、通勤途中でも書けるだろ?」 「確かにそうだね」  松峰先生が形だけの顧問ではなく、自らも小説を書いている先生だったと知って嬉しくなる。 「今度、先生にアドバイスしてもらおうかなぁ……」  思わずひとりごとを言ったら、梶君がわたしの言葉を耳に留め、 「いいんじゃない?松峰先生、きっと喜ぶよ」 と微笑んだ。
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