5.「代わりに打つ!」

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(交番は……あった!)  ショッピングセンターのそばにある交番に駆け込むと、わたしは中にいた警察官に、 「助けて下さい!友達が不良に襲われているんです!」 と叫んだ。  事情を話し、すぐに、警察官と一緒に梶君のいる場所に取って返すと、梶君が3人の不良に殴られていた。梶君は応戦しているようだが、3対1なので、見るからに劣勢だ。  警察官が駆け寄って来たことに気が付いたのか、不良たちはハッとしたように拳を止めると、「おぼえてろよ」と悪役がよく口にするようなセリフを叫んで逃げて行った。警察官が、不良少年を追っていく。  ほっとして力尽きたのか、その場にしゃがみ込んだ梶君に、 「梶君……!」 わたしは半泣きになりながら駆け寄った。 「大丈夫?大丈夫……?」  梶君のそばにしゃがみこみ、顔をのぞき込んで、何度も尋ねる。すると、梶君は「はは」と弱々しく笑い、 「久しぶりにケンカしたら、すっかり弱くなってた。情けねー」 と、膝に顔を埋めた。腕や指から血が出ている。 「わ、わたし、絆創膏持ってる」  わたしはカバンの中から絆創膏を取り出すと、梶君の腕に貼ろうとした。けれど、手が震えていて、うまく貼れない。 「ご、ごめん。ごめんね、わたしのせいで……」  傷だらけの梶君を見ていたら涙が零れてきて、わたしは絆創膏を持ったまま、泣きながら謝った。すると、梶君が顔を上げ、 「別に、蒼井さんのせいじゃないだろ……」 涼やかなまなざしでわたしを見た。安心させるようにぽんぽんと左手で頭を叩き、わたしの手から絆創膏を取り上げる。それを自分で自分の右腕にぺたりと貼った後、梶君は立ち上がった。 「今日はもう帰ろうか」 「うん……」  手の甲で目をこすりながら、梶君の隣を歩く。  泣き続けていたら、梶君がふいにわたしの手を取った。そのまま、ぎゅっと握り込む。 「……!」  驚いて梶君の顔を見上げたけれど、梶君は何も言わずに、ただ前を向いて歩いている。繋いだ手はあたたかく、梶君が「大丈夫だよ」と言ってくれているように感じて、わたしの涙はいつの間にか止まっていた。 *
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