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(交番は……あった!)
ショッピングセンターのそばにある交番に駆け込むと、わたしは中にいた警察官に、
「助けて下さい!友達が不良に襲われているんです!」
と叫んだ。
事情を話し、すぐに、警察官と一緒に梶君のいる場所に取って返すと、梶君が3人の不良に殴られていた。梶君は応戦しているようだが、3対1なので、見るからに劣勢だ。
警察官が駆け寄って来たことに気が付いたのか、不良たちはハッとしたように拳を止めると、「おぼえてろよ」と悪役がよく口にするようなセリフを叫んで逃げて行った。警察官が、不良少年を追っていく。
ほっとして力尽きたのか、その場にしゃがみ込んだ梶君に、
「梶君……!」
わたしは半泣きになりながら駆け寄った。
「大丈夫?大丈夫……?」
梶君のそばにしゃがみこみ、顔をのぞき込んで、何度も尋ねる。すると、梶君は「はは」と弱々しく笑い、
「久しぶりにケンカしたら、すっかり弱くなってた。情けねー」
と、膝に顔を埋めた。腕や指から血が出ている。
「わ、わたし、絆創膏持ってる」
わたしはカバンの中から絆創膏を取り出すと、梶君の腕に貼ろうとした。けれど、手が震えていて、うまく貼れない。
「ご、ごめん。ごめんね、わたしのせいで……」
傷だらけの梶君を見ていたら涙が零れてきて、わたしは絆創膏を持ったまま、泣きながら謝った。すると、梶君が顔を上げ、
「別に、蒼井さんのせいじゃないだろ……」
涼やかなまなざしでわたしを見た。安心させるようにぽんぽんと左手で頭を叩き、わたしの手から絆創膏を取り上げる。それを自分で自分の右腕にぺたりと貼った後、梶君は立ち上がった。
「今日はもう帰ろうか」
「うん……」
手の甲で目をこすりながら、梶君の隣を歩く。
泣き続けていたら、梶君がふいにわたしの手を取った。そのまま、ぎゅっと握り込む。
「……!」
驚いて梶君の顔を見上げたけれど、梶君は何も言わずに、ただ前を向いて歩いている。繋いだ手はあたたかく、梶君が「大丈夫だよ」と言ってくれているように感じて、わたしの涙はいつの間にか止まっていた。
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