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翌日、登校をすると、梶君は来ていなかった。
昨日のケンカのことがあったので心配をしていると、昼休みになってやっと登校してきた梶君は、顔に絆創膏を貼り、右手に包帯を巻いていた。
「か、梶君!どうしたの、その手!」
春ちゃんとフミちゃんと一緒にお弁当を食べていたわたしは、教室に入って来た梶君の姿を見て、慌てて駆け寄った。梶君は恥ずかしそうに小さく笑うと、
「昨日のケンカで倒れた時に打って、ちょっと骨にひびが入ったみたい」
何でもないことのように、さらっと説明をした。
「えっ!骨にひびって……じゃあ、昨日の帰り道、かなり痛かったんじゃない?」
涼しい顔でわたしの手を握って歩いていた梶君を思い出していると、梶君は、
「うん、まあ……少しね」
とわたしから視線を逸らしながら、左手で頬をかいた。どうやら、やせ我慢をしていたようだ。
「梶君、すごい顔!ケンカって何?」
「骨折って、大ごとだねぇ!」
春ちゃんとフミちゃんもわたしたちに近づいて来ると、心配そうな顔で梶君に話しかけた。
「梶がケンカ?」
「まじで?」
ひそひそ声が聞こえて来たので、周囲を見回してみると、教室中の視線が梶君に注がれている。
梶君がばつの悪い表情を浮かべたので、わたしはクラスメイトたちに向かって、
「違うの!これはわたしを助けてくれたから……」
と説明をしようとしたけれど、
「蒼井さん」
梶君に腕を引かれて、止められてしまった。
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