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そして翌日の放課後。
「ここが梶君の家かぁ……」
わたしは一軒の住宅を見上げて「へえ~」と感嘆の声を上げた。
梶君の家はモデルハウスのようなおしゃれな外観の一戸建てだ。周囲の家も似たようなおしゃれな家が多いので、この一角は、まるで住宅展示場のようだった。
「蒼井さん、玄関はこっち」
梶君はわたしを手招くと、玄関を開けて中に入った。広い玄関は綺麗に整頓されていて、あまり靴も出ていない。梶君が先に家に入り、
「どうぞ上がって」
と言ったので、わたしもローファーを脱いで、
「お邪魔します」
と上がらせてもらう。
「父さんは仕事でいないから、気兼ねしないで」
そう言いながらリビングへ案内してくれると、
「ソファーに座ってちょっと待ってて。着替えてから、飲み物いれてくる」
梶君は部屋を出て行った。
すすめられた通りソファーに座った私は、ふと
(梶君、ご両親が離婚してるんだっけ。ということは、お父さんと2人暮らし?……えっ、もしかして、今、この家にいるのって、わたしと梶君の2人だけ?)
と気が付き、にわかに緊張をしてきた。なぜかバクバクと鳴り始めた心臓に戸惑っていると、
「ごめん、お待たせ」
デニムとスウェットの私服に着替え、トレイにコーヒーとケーキを載せた梶君が戻って来た。ソファーの前のローテーブルに置いてくれる。美味しそうなショートケーキを目にして、緊張していた気持ちが和らぎ、わたしは、
「わあ、美味しそう!」
と両手を合わせた。
「ショートケーキ、好き?」
「大好き!」
わたしの返答を聞いて、梶君がほっとした表情になる。
「チーズケーキと迷ったんだ。でも、こっちのほうが美味しそうだったから」
「梶君が買って来てくれたの?」
驚いて問いかけると、梶君は照れ臭そうに頷いた。
「どうぞ。召し上がれ」
梶君にすすめられたので、わたしは、
「じゃあ、遠慮なく……」
フォークを手に取り、一切れすくい取った。ぱくっと口に入れて、
「美味しい!」
と頬を緩める。
「良かった」
にこっと微笑んだ梶君も、わたしの隣に腰を下ろすと、ケーキを食べ始めた。
「梶君も甘いものが好きなの?」
「そうだね。ケーキとかクッキーとか好きだよ」
意外な答えが返ってきて、びっくりする。
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