5.「代わりに打つ!」

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 そして翌日の放課後。 「ここが梶君の家かぁ……」  わたしは一軒の住宅を見上げて「へえ~」と感嘆の声を上げた。  梶君の家はモデルハウスのようなおしゃれな外観の一戸建てだ。周囲の家も似たようなおしゃれな家が多いので、この一角は、まるで住宅展示場のようだった。 「蒼井さん、玄関はこっち」  梶君はわたしを手招くと、玄関を開けて中に入った。広い玄関は綺麗に整頓されていて、あまり靴も出ていない。梶君が先に家に入り、 「どうぞ上がって」 と言ったので、わたしもローファーを脱いで、 「お邪魔します」 と上がらせてもらう。 「父さんは仕事でいないから、気兼ねしないで」  そう言いながらリビングへ案内してくれると、 「ソファーに座ってちょっと待ってて。着替えてから、飲み物いれてくる」 梶君は部屋を出て行った。  すすめられた通りソファーに座った私は、ふと (梶君、ご両親が離婚してるんだっけ。ということは、お父さんと2人暮らし?……えっ、もしかして、今、この家にいるのって、わたしと梶君の2人だけ?) と気が付き、にわかに緊張をしてきた。なぜかバクバクと鳴り始めた心臓に戸惑っていると、 「ごめん、お待たせ」 デニムとスウェットの私服に着替え、トレイにコーヒーとケーキを載せた梶君が戻って来た。ソファーの前のローテーブルに置いてくれる。美味しそうなショートケーキを目にして、緊張していた気持ちが和らぎ、わたしは、 「わあ、美味しそう!」 と両手を合わせた。 「ショートケーキ、好き?」 「大好き!」  わたしの返答を聞いて、梶君がほっとした表情になる。 「チーズケーキと迷ったんだ。でも、こっちのほうが美味しそうだったから」 「梶君が買って来てくれたの?」  驚いて問いかけると、梶君は照れ臭そうに頷いた。  「どうぞ。召し上がれ」  梶君にすすめられたので、わたしは、 「じゃあ、遠慮なく……」 フォークを手に取り、一切れすくい取った。ぱくっと口に入れて、 「美味しい!」 と頬を緩める。 「良かった」  にこっと微笑んだ梶君も、わたしの隣に腰を下ろすと、ケーキを食べ始めた。 「梶君も甘いものが好きなの?」 「そうだね。ケーキとかクッキーとか好きだよ」  意外な答えが返ってきて、びっくりする。
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