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「誰?わたしの知ってる人?」
「うーん、梨乃には分からないかもしれない。1組のクラスメイトだし」
「もしかして、同じ文芸部の人?」
ずばり、正解を言われて、わたしは息を飲んだ。
「あ、図星。赤くなった」
梨乃が面白そうに笑う。
「華乃、告白しないの?」
「……しない」
目を伏せて首を振ると、梨乃は、
「ええ~、そうなの?」
と、残念そうな声を上げた。
「だって、せっかく仲がいいんだもん。告白してフラれて、ギクシャクするのイヤだ」
「そんなこと言ってて、誰かに取られたらどうするの?」
梨乃に不安になるようなことを言われて、ドキッとした。その可能性を、わたしは考えてはいなかった。
斎木君のことを好きだった時、わたしは何もできなかった。そして斎木君は、梨乃と付き合うことになったのだ。
あの時のような気持ちには、なりたくない。
「…………」
黙り込んでしまったわたしに、梨乃は優しい目を向けた。
「仲がいいんでしょ?可能性がないわけじゃない。後悔しないようにした方がいいよ」
梨乃がわたしの側まで近づいてきて、肩に手を置いた。
背中を押すように、ぽんぽんと軽く肩を叩いた梨乃を見上げ、
「可能性……本当にあるのかな?」
と、弱々しく尋ねた。
「あたしはあると思うな。だって、華乃は、あたしの自慢の素敵なお姉ちゃんだもん」
わたしは太鼓判を押してくれた梨乃の顔を見上げると、
「そう……かな。だといいんだけどな…………」
頼りなく、小さな声でつぶやいた。
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