5.「代わりに打つ!」

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「誰?わたしの知ってる人?」 「うーん、梨乃には分からないかもしれない。1組のクラスメイトだし」 「もしかして、同じ文芸部の人?」  ずばり、正解を言われて、わたしは息を飲んだ。 「あ、図星。赤くなった」  梨乃が面白そうに笑う。 「華乃、告白しないの?」 「……しない」  目を伏せて首を振ると、梨乃は、 「ええ~、そうなの?」 と、残念そうな声を上げた。 「だって、せっかく仲がいいんだもん。告白してフラれて、ギクシャクするのイヤだ」 「そんなこと言ってて、誰かに取られたらどうするの?」  梨乃に不安になるようなことを言われて、ドキッとした。その可能性を、わたしは考えてはいなかった。  斎木君のことを好きだった時、わたしは何もできなかった。そして斎木君は、梨乃と付き合うことになったのだ。  あの時のような気持ちには、なりたくない。 「…………」  黙り込んでしまったわたしに、梨乃は優しい目を向けた。 「仲がいいんでしょ?可能性がないわけじゃない。後悔しないようにした方がいいよ」  梨乃がわたしの側まで近づいてきて、肩に手を置いた。  背中を押すように、ぽんぽんと軽く肩を叩いた梨乃を見上げ、 「可能性……本当にあるのかな?」 と、弱々しく尋ねた。 「あたしはあると思うな。だって、華乃は、あたしの自慢の素敵なお姉ちゃんだもん」  わたしは太鼓判を押してくれた梨乃の顔を見上げると、 「そう……かな。だといいんだけどな…………」 頼りなく、小さな声でつぶやいた。 *
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