4.「本を出さなくてどうするの!」

16/26
前へ
/134ページ
次へ
 小説用のルーズリーフのファイルを取り出し、数ページ書き進めた時、 「華乃。お風呂空いたよ」 と言いながら、梨乃が部屋に戻って来た。 「――!」  わたしは、びくっと背筋を伸ばした。 「あ、ああ、梨乃。出たんだ」 「うん。……どうかした?」  明らかにびっくりした様子のわたしを訝しんで、梨乃が小首を傾げた。 「勉強してたの?集中してたところ、邪魔しちゃった?」 「ええと……」  わたしは迷って、言葉を濁した。勉強なら確かにしていた。さっきまでは。  でも、今は小説を書いていた。梨乃にカミングアウトするなら、今がチャンスではないだろうか。 「あ、あのね、梨乃。話したいことがあるんだけど、いいかな?」  わたしはファイルを胸に抱くと、学習机の椅子を回転させた。 「話?」  きょとんとした梨乃を見上げ「実は」と口を開く。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加