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小説用のルーズリーフのファイルを取り出し、数ページ書き進めた時、
「華乃。お風呂空いたよ」
と言いながら、梨乃が部屋に戻って来た。
「――!」
わたしは、びくっと背筋を伸ばした。
「あ、ああ、梨乃。出たんだ」
「うん。……どうかした?」
明らかにびっくりした様子のわたしを訝しんで、梨乃が小首を傾げた。
「勉強してたの?集中してたところ、邪魔しちゃった?」
「ええと……」
わたしは迷って、言葉を濁した。勉強なら確かにしていた。さっきまでは。
でも、今は小説を書いていた。梨乃にカミングアウトするなら、今がチャンスではないだろうか。
「あ、あのね、梨乃。話したいことがあるんだけど、いいかな?」
わたしはファイルを胸に抱くと、学習机の椅子を回転させた。
「話?」
きょとんとした梨乃を見上げ「実は」と口を開く。
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