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松峰先生が商業の担当の先生にコンピューター室の利用許可をもらってくれたので、わたしたちは教室のカギを持って、新校舎に向かった。道中、
「蒼井さんはパソコン出来る?」
と梶君が尋ねてきたので、
「少しだけ。お父さんのノートパソコンでゲームさせてもらったり、ネットサーフィンしたりしてる」
と答えた。
「ゲームとネットか……。ちょっと心許なさそうだね。俺も手伝うから、分割して打ち込むことにしよう」
梶君の提案に「うん」と頷く。
コンピューター室の中に入り、適当にパソコンの前に座ると、わたしたちは本体の電源を押した。軽い起動音がして、パソコンが立ち上がる。梶君がカバンから2本、メモリースティックを取り出し、わたしと梶君の前のパソコンのUSBポートに、それぞれ突き刺した。
「蒼井さん、ワープロソフトを開いてくれる?」
「ワープロソフトって、これ?」
アイコンを指し示すと、
「そう。それ」
と頷きが返ってくる。ダブルクリックしてソフトを開くと、白紙のページが現れた。
「俺が1章と2章を打つから、蒼井さんは3章を打って」
「分かった」
わたしは、ルーズリーフをファイルから外すと、1章と2章の部分を梶君に渡した。
「お手数をかけて、ごめんね。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、梶君は、
「お安い御用」
と言って、ニヤリと笑った。キーボードに手を置いた途端、猛烈なスピードでタイピングを始める。
「……すごい!」
梶君の鮮やかな手つきに、わたしは目を見開いた。
(わたしも負けてられない)
ルーズリーフをそばに置くと、わたしもキーボードの上に手を乗せた。たどたどしく文字を入力していく。
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