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静かなコンピュータ―室に、わたしたちがキーボードを打つ、カタカタという音だけが響いている。
しばらくの間、集中してタイピングしていると、ふと、梶君が手を止めた。どうしたのかなと思って横を見ると、梶君はカバンを取り上げ、中からヘアピンを取り出した。
「……?」
何をするのだろうと見つめていると、梶君は前髪を横に流し、ヘアピンできゅっと留めた。
(長い前髪が鬱陶しいのかな?)
前髪をよけると、梶君の眼鏡の奥の瞳がよく見えた。真剣な表情。整った面立ちを見て、なぜか、胸がキュウと鳴る。
わたしは慌てて液晶画面に向き直ると、タイピングを再開した。けれど、先程のように集中できない。今、この教室に梶君と2人きりだということが、なんだかとても緊張する。
(いつも図書室で一緒にいるのに……)
でも、図書室には図書委員と司書の末広先生もいるので、実質、2人きりではない。
ほんのりと熱くなった頬に戸惑いながら、わたしは努めて冷静を装うと、精一杯早く指を動かして、タイピングを続けた。
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