4.「本を出さなくてどうするの!」

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 さっそく、教室の机の上に並べていると、漫画研究部の部員が3人近づいてきて、 「それが文芸部の本?」 「一冊もらっていい?」 「私にもちょうだい」 と声をかけてくれた。わたしは気恥ずかしく思いながらも、 「はい、どうぞ」 と、えんじ色のネクタイをした2年生の先輩たちに手渡した。 「いいなぁ~。漫研もこんな本、作りたいなぁ」 「本当」  先輩たちが本の中を見ながら羨ましそうに話している。もう1人の先輩が、いいことを思い付いたというように目を輝かせ、 「そうだ!来年は、漫研と文芸部で合同誌を作らない?私たち、挿絵を描くからさ」 と、わたしと梶君の方へ身を乗り出した。 「それいい!」 「やりたいやりたい!」  他の2人の先輩も乗り気になり、わたしたちをキラキラした目で見つめてくる。 (合同誌……挿絵……)  わたしは自分の小説に挿絵が付いたところを想像してみた。 (挿絵が付くなんて、素敵。漫研と合同誌、わたしもやりたい!)  期待を込めて梶君を振り向くと、梶君は、ふっと笑って、 「いいんじゃない?来年はそうしようか」 と言った。 「やったー!」 「漫研も大歓迎」 「今からもう来年の文化祭が楽しみになってきた」 「って、今年の文化祭、これからだし」  わたしと先輩たちは、4人で手と手を取り合って小躍りして喜んだ。
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