4.「本を出さなくてどうするの!」

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 みんなでわいわいと喋っていると、また誰かが教室に入って来た。 「梶、高校でまで、そんなことやってんの?」  刺々しい声に驚き、そちらを見ると、そこにいたのは百瀬君だった。制服のズボンのポケットに手を突っ込み、冷めた目でこちらを見ている。梶君が息を飲んだ音が聞こえた。 「どれだけ自己顕示欲が強いわけ?プロ作家だって隠して書いて、自分は他人と違って特別なんだって、心の中で周囲を馬鹿にしてるんだろ?あさましいよなぁ」 「…………」  悪意に満ちた言葉に、梶君は無言のまま、うつむいた。 「梶君……」  わたしは唇を噛んでいる梶君を見て、百瀬君に対し、ふつふつと怒りが沸き起こってきた。  わたしは、机の上からバッと一冊、本を手に取ると、百瀬君の前まで歩いて行った。わたしの突然の行動に、梶君や春ちゃん、フミちゃんが驚いている。 「あのねえ!百瀬君が梶君の才能を妬むのは勝手だけど、馬鹿にするのは許せないよ!梶君は別に自己顕示欲で小説を書いてるわけじゃない。自分の内面にある世界を表現して、それを人に楽しんでもらいたいって気持ちで書いてるの。小説を書きあげるのって、すごく大変なんだよ。アイデアを絞り出すのに苦労するし、自分が面白いものが書けているのか不安にもなる。途中で、もう書くのを止めようかなって、諦めたい気持ちにもなる。でも、わたしたちは、気持ちを伝えたくて書くの。真剣な気持ちで、身を削って書いてるの!だから、そんな風に言わないでよ!」  わたしは本を百瀬君の胸に突きつけた。 「これを読んでも梶君がそんな人だって思うなら、もう一度、わたしのところへ来て。わたしが梶君と梶君の作品の魅力を、徹底的に叩き込んでやるから!」  啖呵を切ったら、百瀬君は怯んだ様子をみせた。 「分かったら、これを持って出て行ってよ!」  百瀬君はわたしの手から乱暴に本を奪い取ると、背中を向けた。肩を怒らせながら、教室を出て行く。わたしは、はぁと息を吐いた。すると、 「華乃ちゃん、かっこいい!」 「よく言った!」 フミちゃんと春ちゃんが手を叩く音が聞こえた。振り向いてみると、2人が満面の笑顔でわたしを見ている。 「かっこいいってそんな……」  思いがけない言葉に動揺していると、ふいに、あちこちから拍手が聞こえてきた。漫画研究部の部員たちが、わたしを見て、感心した表情を浮かべている。
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