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「あ、あの……」
拍手喝采を受けて、わたしはすっかり恐縮してしまった。
「そういうつもりで言ったわけじゃ……」
わたしは「やめてください」というように顔の前で手を振った。こんな風に称賛されると、とても恥ずかしい。
ちらりと梶君に目を向けると、彼は口元に手をあて、うつむいていた。耳が赤くなっている。
「……梶君、どうしたの?あっ、わたしが、あんな風に百瀬君に突っかかったから、怒ってる?」
(ど、どうしよう……)
おろおろとしていたら、梶君が上目づかいでわたしを見た。
「俺の魅力って、何それ……」
小さなつぶやきが耳に届き、わたしは、さっき百瀬君に言い放った台詞を思い出した。そう言えば、わたしは、「梶君の作品の魅力」だけでなく「梶君の魅力」まで、力説していた気がする。
「……!」
口を突いて出た自分の言葉に驚いて、わたしの頬に血が上った。熱い。きっと今、わたしは、真っ赤になっている。
「え、ええと……それはね…………」
もごもごと口ごもっていたら、春ちゃんが、バシンとわたしの背中を叩いた。ニヤニヤしつつも優しいまなざしでわたしを見ている。
「じゃあ、私たちはそろそろ行くね」
「頑張ってね~」
春ちゃんとフミちゃんが手を振って教室を出て行く。その背中を見送った後、わたしはそうっと梶君の隣に立った。
隣に梶君の気配を感じる。ただそれだけのことが、嬉しい。
その後、わたしたちはあまり言葉を交わさず、教室にやって来る生徒たちに、本を配り続けた。
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