始まりの始まり

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相手側と話し合いが着くまで何度も話し合いがされた。 結局、お互いの慰謝料は相殺になった。 弁護士費用も各自負担になった。 向こうは離婚をするんだからと、こちらよりも高額を提示して来たが、私がもう1年前から不倫相手を知っていても夫婦関係を円満に過ごしていたのに、逆に相手の夫が会社に乗り込んで来た事により夫婦関係が破綻し、子供が受けた精神的苦痛は計り知れない事を主張し、会社に乗り込んできたことと、子供のことが大きかったのか、慰謝料は相殺ということで示談になった。 社会的な制裁はもちろん夫の方が上ではあるが、それは仕方のないことであり、とりあえず、向こうの家庭の慰謝料の話はこちらには関係ないのでよしとした。 正直、別に今回の件で夫婦関係は破綻もしてなければ、麻奈も精神的苦痛を感じてはいない。もう私たちは全て知っていたのだから。 ただ、弁護士の先生に全てお任せしたのだから、嘘八百だろうとそんな事はどうでも良かった。 幸い夫は相手の女性が辞めていった事で、本社には残れる事になった。 仕事はとりあえず出来る人だったので、その点で救われたのだろうか。 ただ、社内における信用は無くなってしまっているだろう。でも針の筵だろうが自分の撒いた種である。 そして私と麻奈を養うために、仕事は続けてもらわなければならない。 せっかく首の皮一枚繋がったのだから、退職なんてされるぐらいなら離婚だと仄めかした。 「やっと落ち着いて良かったわね」 笑顔で涼香先生は言う。 「ええ。涼香にも心配かけたわね。ごめんなさい」 私たちはワインで乾杯した。 「本当は、夫が左遷されなかった事はちょっとがっかりだったの。どこか地方にでも飛ばされてくれれば、もっと涼香とも会えるし、麻奈も連れて3人で旅行にも行けたかなって」 私が言うと涼香先生は私の顔を真剣な目で見ている。 「ねぇ、ご主人に会わせてくれない?」 涼香先生の言葉に私は驚いた。 「それって、私達が愛し合ってるって夫に言うの?」 今となってはそれでもいいと思った。 「違うの。友人としてご主人にちゃんと紹介して欲しいの。この家に泊まっても不審がられないように。ご主人も自分の浮気がバレる前は、里緒奈のこと疑心暗鬼で見ていたでしょ?夫婦関係が全くなかったんだから。でも、夫婦関係が無くなった原因が自分にあると分かったんだもの、里緒奈が外泊しても余計な詮索しないでしょ?その相手が私なら尚更」 涼香先生の言葉を聞きながら、私は嬉しくなった。 私のためにずっと我慢していた事を、もう我慢したくないと言ってくれてるように思えた。 朝も昼も夜も、私を欲しいと言ってくれてるように聞こえた。 「分かったわ。涼香、本当にありがとう。麻奈のことも大事にしてくれて。いつまでも夫と離婚しない私に本当はイライラしてたんでしょ?」 「してたわ。でも、麻奈ちゃんとご主人を離すことなんてできないもの。里緒奈が離婚を決意できないのも麻奈ちゃんの為って分かってたし。それに、私も麻奈ちゃんともいい関係が続けられて嬉しいもの。でも、里緒奈を独り占めにしたい時もあるの。だから」 私は涼香先生の告白を聞きながら幸せでたまらなかった。 夫との生活は、今まで通り変わる事はない。 生活のためだけに、夫と家族ごっこをしている。 私はこれからも、涼香先生だけを一生愛する。 完
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