始まりとは

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さすがプロだ。 そして馬鹿な夫の姿に私はため息。 こんなに簡単にバレるとかマヌケというか、危機感がないというか。でも単純な男で良かった。 私と結婚したのだって、私が大人しくて従順だったから、夫はきっと私を妻に迎えたのだろう。 夫に流されて避妊をせずに、結婚前に子供が出来てしまったのは私にも責任はあるけど、子供が出来たことは一度も後悔したことなんてなかった。 「慰謝料の請求や、調停になった時のために弁護士に相談されるなら、良い弁護士を紹介しますよ?離婚専門に扱っているので。弁護士の先生も女性なのでお話ししやすいかと?」 興信所の所長に報酬を払った時にそう言われた。 「離婚は考えてません。ただ事実を知りたかったので。もう5年以上夫婦として生活してなかったので、今更……………」 今離婚して? 財産分与でどう生活していく? 子供の養育にだって、結婚していた方が生活は楽。 将来娘が結婚する時だって、両親がいる方がいいに決まっている。 自立していない私は現実を受け止めて、夫と生活していくしかなかった。 名ばかりの短大を出て、何か資格や特技を持っているわけでもない。 自分を自分で家政婦だと思えば良い。 それに、負け惜しみではなく、他の女を抱いている男に抱かれるなんて虫唾が走る。 そう。 セックスレスになった時から、夫を愛していないのかもしれない。 だから私は冷静でいられる。 興信所の事務所を出て、私は深呼吸をした。 霧が晴れた私は、逆に心が軽快になった。 疑心暗鬼にならなくて良いと思えば、興信所に支払った報酬など痛くもない。 その分、これからも夫のお金は自由に使わせてもらうわ。 今まで我慢していたけどもうしない。 エステに通って、ママ友と楽しくランチして、欲しい服も靴もバッグも。 夫が外で女にお金を使う余裕がなくなるほど、私は夫のお金を使いまくることに決めた。
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