新米書記の日常 双子と会長おまけのワンコ

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   君と出会ったのはいつだっただろうか。  春風に紛れ、そう(とぼ)けてみたけど。忘れた事なんて無かった。  腐に満たされ、浮かれ(ほう)けていた日々に、突如稲妻が落ちた。その衝撃たるや、俺史上最高潮だった生徒会での甘く滾っていた時間が、俺史上もっとも深いどん底まで引き落とされるくらいのものだった。  最高潮の時は終わってしまったのだが、少しだけその時の事を思い出しても良いだろうか。  少し、といいつつ、名残惜しさと切なさで、結局20ページをその冒頭で使ってしまうのだけど。  後に続く絶望へ、皆様のささやかな施しをこの哀れな俺に与え賜え。 ーーーーーーーー  春風が心地いい季節  生徒会室 会議中  まだ肌寒いけれど、こもった空気を押し出すため、生徒会室の窓は少しだけ開けていた。そこから、ホケキョと春の声が耳を撫でてた。ホワイトボードの壁と睨めっこしながら、有栖川は窓から運ばれた、春の暖かい香りを胸いっぱいに吸い込む。  その心地よさに浮かれきった心はさらに舞い上がり、有栖川の黒いマーカーを持つ手に力が入らない。 「書記……字が汚い」   「………」  ホワイトボードに書かれた文字は、所々ヨレヨレでとても読みづらい。  ついに会長に指摘されてしまった。  でもしょうがない。  有栖川は、チラリと隣に視線を向ける。  なぜなら、会長の膝の上に庶務の双子が座ってるんだもん‼︎‼︎  大きな会議机の議長席にいる生徒会長。とても小柄な男の子2人が、会長の右膝と左膝に足をかけ、座っている。それも、会議中というのに、会長の顔触ったり、双子二人で手遊びしたり。  有栖川はそれを直視してしまった。  かわいーかよ!!  そんなの真隣でやられたら、マーカー持つ手が震えるだろ!! 腐男子の俺からしたからご馳走様です‼︎ ……なんですが⁉︎  萌えたぎる状況に、有栖川の脳内は勝手にパーティーを開いていた。  だがしかし、現実の顔は死んでいた。  眉間にシワを寄せ、誰かを殺すんじゃないかと言う目付きをして、ホワイトボードと睨めっこしている。これは、有栖川(ありすがわ) (けい)がこの学園でみにつけた防★衞★策だった。  どうしてそんな現代において最重要スキル=社会性に反した、防衛策をとることになったのかというと、それはこの後の大変気持ち悪い(いや、これは有栖川に怒られてしまうので見なかったことに)  この後の大変有意義な性癖のせいであった。  ポワポワポワ〜っと  有栖川妄想劇場の扉が開く。 (お前ら……なんで俺の膝に座る) (えーだって、会長忙しくて全然相手してくれないんだもん) ((ねー)) (だからって会議中に……っておい、こらどこ触ってる) (どこって?) (言ってくれなきゃ分からないよ〜) (誰かに気づかれたらどうする!) (えーじゃあ見つからないように、我慢しなきゃだね) (そうじゃないと、かいちょー変態になっちゃうね) (お前らだろ! この変態双子が‼︎) (変態じゃないよ〜会長が好きなだけ) ((ねー)) (おい……あとで覚悟しろよ? 2人とも明日は休むと思え)  ポワポワポワ……  てきな!!!  てきな、てきな!!!!  ヤバイこれいい!  絶対ネタにする!!  ありがとうございます。  やっぱ生徒会入って良かったー!  ひゃっはーー!!  と、まぁ、このように。  興奮と異常なテンションから、変態チックにニヤけ、社会不適合者となってお縄になり、この学園(楽園)からの追放を免れるためであった。  元々切れ長の目と、シャープな顔立ちも相まって、興奮を怒り顔にチェンジさせることで、誰も有栖川が男同士の変態妄想をしているとは思ってはいなかった。  むしろ、男達の絡みに対して必ずヤクザ顔になる有栖川に、周りはボーイズラブ的な要素が大変嫌いなんじゃないかと噂するほどであった。  まぁ、真逆だが。    有栖川(ありすがわ) (けい)という人物は、そう。  極度の妄想癖!  極度の腐男子!  それいわゆる、極度の変態‼︎‼︎  であった。  さらに、最近ではその妄想の吐口として、同人活動に手をつけてしまう事態である。  一般人としての有栖川の人生は、初等部初期で、終わっていた。  
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