新米書記 非日常の始まり

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 急に慌て出した有栖川は、机に置かれていた資料を手に取る。まだマリモの教室がどこだか確認していなかった。 「やべっそういや朝だった……モブ書記が遅刻はやばい。目立つ」  本当は目立っているのだから今更気にしてもしょうがないが、有栖川には死活問題だった。  パラパラとめくり、ようやくその事項を見つけると、バンッと有栖川の手が会議机を叩いた。音にビクッとマリモが跳ねる。 「マリモの教室って……同じかよ! ふざけんな」 「教室の姿まで拝めるとは、ついてる」  絶望する有栖川と対象に、非王道ルートが優勢になったマリモは素直に喜んだ。 「ついてねぇよ! まぁいい! とにかく急げ!!」  有栖川が慌てて席を立ち、マリモの手を引き、立ち上がらせる。 「わっ……」 「……ッ」  マリモの立ち上がった姿に、有栖川が息を呑んだ。  先程歩いていた時は、少し距離があったが、隣に立つとその大きさに目を見張る。自分より少し大きなその背丈に、有栖川はまた無性にイライラしてしまった。  生徒会室の鍵をしめ、イライラを振り切るように教室まで走り出す。マリモもちゃんと隣で走っていた。 「君意外と背高いんだね」 「まぁ、そうだな。そこもウリだし」  ウリ?  受けの間違いか?  腐ィルターを通してもイマイチ言葉の意味が汲み取れないが、有栖川は物申したいことがあった。 「あのさぁ、ここまで王道転校生なら、もっと身長低くしてから出直しなよ! 俺がこの足、スネから折ってやるよ! ほらっ」  と言って、走りならが器用にマリモのスネ目掛けて蹴りを入れる。  間一髪で避けたマリモはバランスを崩しながらも、ギリギリ体幹で転ぶのを耐えた。チッと舌打ちをかます有栖川に衝撃を受けた。 「あっぶな、お前サイコパスかよ!?」 「手伝ってやってるのに、避けるなよ。あの双子くらい小さくなって貰わないと」 「え! 生徒会に双子いんの?」 「ちな、ワンコもチャラ男もいる」 「マジか!(たぎ)ってきた!! つか、お前さっきのどこまで読んだ?」 「食堂の辺りまでかな」 「良いところじゃねぇか! あの短時間でよく読んだな」 「速度は基本だからね。ピンクページはじっくり読むけど」 「禿同……ッ!」  腐男子の絶交とは、よくわからないものである。
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