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教室に近づくと、有栖川はニヤリとした笑みをマリモに向けた。
マリモと一緒の教室というのはシャクだが、こちらも王道が見られるということに有栖川はやっと気がついたのだ。
だがしかし……教師なぁ……
まぁ、別にイチャイチャしてもらえるなら、アレもありか……うへへ
さらにあの流れでいくならば、この手で足掛けすることができるチャンスがあるということ。……いいかもしれない。
有栖川によるマリモ短足計画は着々と進んでいるのだった。
「おいマリモ、ちゃんと教師フラグ回収しろよ?」
「ふっ……するわけないだろ……甘いな、有栖川。……逆に俺は、お前を転校生のお世話係にして、しっかり巻き込んでやるところだ」
「ざけんな! 俺は足掛けモブだ、折ってやるからスネ出しとけ」
「それは足掛けじゃねぇ! このサイコパス‼︎」
叫ぶマリモに有栖川は、眉間にシワを寄せつつ、この後に来るであろう萌えに期待を込めていた。
有栖川には使命があった。
無事に足掛けを成功させ、教師の注目を引き、心配になった教師からこのクラスのイケメン委員長との交流フラグを何としてでも回収させなければならない。
そこから始まるラビリンス……それは多分……
なんだかとても久々に、閉ざされた劇場の鍵が開けられる気がする。
ポワポワ〜
(一ノ瀬君大丈夫? 膝擦りむいてない?)
(委員長心配してくれるのか? お前、すげー優しいな! ニカッ)純粋スマイル
(キュンッ……一ノ瀬君、君は自分が足かけられたのに人のこと褒めちゃって……。こんなの当然だよ……ほら、膝だして。やっぱり擦りむいてんじゃん)
(あ、おい、やめろって…! こんなの舐めときゃ治るから! 大丈夫だよ!)
(そう? じゃ俺が舐めちゃおうか……ん……)
ぴちゃ…
(ひゃ! おい、なんだよ……や、やめ)
(んっ……ダメだよ。バイキン入っちゃう前に俺の…入れないと…ん、はぁ)
(ひゃあ、だ、だめ……委員長)
「有栖川こぇえよ! そんなおっこんなよぉ! 運命なんだから☆」
バシィィ‼︎
「ッッ⁉︎⁉︎⁉︎」
幸せに満たされた妄想を、突如遮られた。訳の分からない衝撃に有栖川の視界がチカチカと弾ける。
まだ、マリモはこのヤクザ顔の状態をしらない。突然暗いオーラを背負い、顔面にシワを刻む有栖川を元気づけようと、マリモは無駄に明るい声と共に縮みかけた有栖川の背中を強く叩いた。
それによって、幸せを描いていた妄想劇場の扉が地面からガタガタと崩れていく。
さらに耳を刺した意味不明な言葉。
イライラと絶望により、ヤクザ顔は終わりを告げた。そして、
「黙れクソマリモ‼︎」
有栖川がマジの怒り顔になったが……そこにあまり差はなかった。
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