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とある日 とある教室
大遅刻
ガラッ
有栖川が勢いよく扉を開いた。マリモは直ぐにでも有栖川をお世話係にさせるため、その後ろにひっつき分厚い髪の毛の下でニヤケさせる。
だが
「おいこら、有栖川ぁおせぇぞ!!」
ん?
声高い?
イケメンホスト教師と言えば、低音ボイス想像していたマリモ。思ったより高い声音に首を傾げるが、ひっついた有栖川の背中で中の様子は分からない。
「すみません」
「謝っても無駄だもんねぇー! はい、有栖川ちこくー!」
ペコリと有栖川が頭を下げたことにより、マリモやっとその光景を目にすることになる。
目の前の教卓の上に、小学生くらいの男の子が仁王立ちをしてこちらを見ている。なぜかスーツを着用しているが……それもコ◯ン君のような小さい子が着るものでは無く、大人用のスーツ。
両手両足は精一杯たくし上げられているもののぶかぶがで、指先は隠れ、足は裾を踏みつけている。襟首に至ってはしっかりボタンが止められているはずなのに、だらしなく首元が見えていた。そして緩くかけられたネクタイは、なんとも不格好な仕上がり。
このだらし無さが、奇しくも若干エロホスト感を出してるかもしれないが……
濃い栗毛に、まん丸な瞳。少し悪戯っぽく釣り上げた目尻と口元は、やんちゃ少年そのものだった。
なんでこんな所に初等部の子が!?
「いや、転校生連れて来てたんですよ……ほら、マリモ早くこい!」
まるでしつけの悪い犬を引っ張るように、有栖川はマリモの腕を引き、教室の中に引きずり込む。
「うぉ…っと……と」
バランスを崩したマリモは片足で地面を数回跳ね、教卓に手をついてしまった。
目の前に小さな足。
体重をかけたことで、机が揺れ、僅かにその小さな足はバランスを取ろうとパタパタとしていた。
分厚い髪の毛でマリモが上を見上げる。
「なにぃ? ……転校生だぁ?」
少年は不快そうに見下げていた。
なに…
この2次創作で汚いオジさんに襲われてしまいそうな、やんちゃショタは……多分嫌々言いながら躾けられる感じだろうな……
※マリモの妄想は有栖川よりエグミが強い。なお、アク抜きは不可能。
昼間から危険な妄想をしかけたマリモは、ハッとしてモサモサ頭を振った。
「いや、ちょ!? こんな所登ったら危ないじゃん!!」
慌ててマリモが教卓に上がっている少年の脇に手を入れ、持ち上げた。
「お、おいやめろ! なにするんだお前!!
はなせぇ!!!」
両手をワタワタと暴れされるが、マリモの長いリーチに届かない。逆にまくっていた袖が全て戻り完全に手足を隠した。
「場所間違えたのか〜? 職員室いこうな〜その服どうしたんだ〜制服着なきゃだめだろ?」
言いながら、マリモは少年を空中で緩く上下させていた。俗に言うたかいたかいである。
″え……″
″なにしてんの…″
″ヤバくね…″
ザワザワ……
心なしか周りがザワザワしてる?
……いや、この見た目なのだ。教室ザワザワ……これは回避しようにも避けられないフラグ。
ふっ……絶対に回収していまうフラグとは、なんとも数奇なものだ。
こういうアホほど、自分の数奇さを美談とまでに酔いしれてしまうものだ。しかし、そいう時は必ず何か、目を覚まさせる事態になるため、気をつけなければならない。
「やめろぉおおお、おれは教師だぁあ!!」
ゲシッ
「ぐふぉ⁉︎⁉︎」
マリモの顎に、細い足から繰り出されたとは思えない鉄のように重たい蹴りがクリーンヒットした。
視界に赤い閃光が飛び、マリモが後ろに弧を描く。その描かれた弧は、美術的と言えるほど美しかった。
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