非王道×非王道=(教室+食堂)フラグ

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 ハッ!!  唐突に有栖川は気がついた。  ネットリと絡みつく視線に。  視線に振り返ると、その分厚い髪の毛の下で酷くにやけるマリモ。  ワシャワシャ撫で付けていた手がとまる。志樹がもっと続けろと言おうとしたが、暗い表情にシワを刻んだ有栖川(マジの怒り顔)に、柔らかな志樹の声はでなかった。 「先生、お金貰ってるんだから、授業してください。大人でしょう? 理事長にいいますよ?」 「ふぇえええ……お、恐ろしいこというなぁ…うぇ…わ、分かった」  志樹はそこでいったん顔を下に伏せた。 「でも、足りない…」  離れていく有栖川の手をパシッと掴み、もう一度有栖川に顔を向ける。ニヤリと口の端をあげ、怪しい笑みを付け加えて。  それはやんちゃショタというよりは……もっとこう……怪しい…   「だから責任とって…あとで部屋来いよぉ、有栖川ぁ?」  艶を帯びた少し低めの声音。  あれ?  俺の妄想劇場いま扉修復中じゃなかったっけ?  頭にハテナを浮かべて動きをとめる有栖川に、志樹にもう片方の腕も捕え、自分の方へ引き寄せる。 「うわっ……」  さすが黒帯という力に、有栖川はその小さな胸に抱き寄せられた。そして、耳元に息がかかる。 「おいこら、有栖川ぁきいてんのぉー? 返事しろや…じゃねぇと…  煮たり、焼いたり、入れたり…すんぞ?」 「………。」  伊月志樹は、やはり伊月双子達の兄である。むしろ歳をとっているだけあって、色々な経験もしていることで垢抜けていた。  黒帯という事実的な力もあいまり、伊月双子の数倍毒気がある、可愛らしい担任の先生なのであった。  わっかりましたぁ!  俺には分かっちゃいました!  今さっき、頭打ったせいで網膜の神経細胞と、思考にいくためのニューロンにあるシナプス小胞体がおかしくなって、うまく情報の伝達ができていないのだろう。  ゆっくり志樹の腕の中から逃れた有栖川は、黒板に2つ付いてる銀色チョーク入れに手を伸ばす。そして粉を入れられる方を手に取った。  これではフラグにいきつかない。  これは…直ちに治さなければならない。  大きな瞳の上に銀色のチョーク入れが翳される。 「ん? 有栖川どうした? チョーク入れなんて持って…」  志樹がそれに目を向けた直後、有栖川の手で、それはくるっとひっくり返された。  パサッ… 「ぅあああああ‼︎‼︎ 目がぁああ」 「ホァイ!? 有栖川!? お前なにやってんの!? やっぱサイコパスなの!?」  突然の暴挙に、マリモがカツラのくせにその髪の毛を逆立てた。  チョークの粉が目に直撃した事で、酷い激痛が志樹を襲う。目を覆い、教室の前での左右にのたうち回っていた。時折ガツンと教卓に足がぶつかる。  有栖川はフフフと笑って見ていた。  ちゃんと治ってるといいな、などと思いながら。  その地獄絵を周りの生徒は目の当たりにし、赤い目の暗殺者に恐怖した。
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