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「とてもいい!」
あれ?
妄想の中で叫んでいたはずが、自分の口からでた大きな声に、違和感を覚えた。
俺声出した?
「「やったー!」」
確認する間も無く、双子が抱きついたままニコーっと笑顔を作る。
あ……やっべぇ……余裕かましてるから……最悪だ……俺は傍観者だから、名前呼びとか避けてるのに……
ガバガバすぎる劇場の扉を突貫工事することを有栖川は心に決めた。
「美樹嬉しい!」
「真樹も嬉しい!」
「「顔怖いけど!」」
そう言って、双子が勝ち誇った満面の笑みを浮かべる。
ぐぅかわ……
この調子なら、有栖川を2人で新しい世界に引き摺り込むのも時間はかからない。有栖川の表情は怖いものの、嬉しい回答が返ってきたことで双子の気持ちが舞い上がる。それは抱きつく力となって、有栖川の体を両側からプレスしていった。
「あの、美樹さん、真樹さん⁉︎ ちょっと苦し」
ウエストをギュウギュウと絞られ、内臓が押しつぶされる。堪らず双子の肩を押し返そうとするが、小さい体に反してびくともしない。
「「アリスちゃんから名前呼ばれるの好き〜」」
ギュウぅううう
うううう!?!?
ってちょい!?
好き言いながら、殺そうとしてますよね!?
殺そうとするくらい嫌なら呼んでとか言わないでくれませんか!?!?
ぐるじぃ……
このままでは、腰から上と下を切り離された状態で成仏しなければならなくなる。
「あ、あの……ちょ……死ぬ…」
死ぬ死ぬ死ぬ
まだ俺にはやることがあるのに……
今日のシチュ絵に残さないと……死にきれない……のに……
「……美樹、真樹……だめ」
そのワンコの声が聞こえたと思ったら、俺を殺そうとしていた重圧がフッと消えた。
あ、今度はちゃんと だ を言ってた。
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