新米書記の日常 双子と会長おまけのワンコ

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 だがしかし、重圧が取れたはずの有栖川の体はまたすぐに僅かな重みがかかった。  ギュウゥ  ぎゅう?  牛?  にゅう?  なぜかまた、暖かいものが俺の体を包んでいた。2人よりも優しく、そして大きい。  有栖川がすっぽり入ってしまうくらい。そんな事ができるのは多分、ここには1人しかいなかった。  でも、言っても俺はそんなに小さいほうじゃないからね、、このワンコが大きすぎるだけで。  見上げるとやっぱり東の姿がそこにあった。 「あの、ワン……(あずま)先輩?」 「有栖川……死ん…だら……嫌……」 「あぁ、ありがとうございます。助かりました……」  心配そうなワンコの瞳が有栖川を見つめる。  だけど何でこの状態なんでしょうか……?  脇からは有栖川を奪われた双子が、東を見上げる。ここからが腕の見せ所だというのに、とんだ邪魔が入ってしまった。 「「せいちゃん、ひどーい」」 「……だめ……俺の……」  ポカポカと小さな腕が東を叩くが、一向に有栖川を解放しない。見つめ合う3人に、有栖川の迷推理が炸裂する。  あーなるほど。  分かりました。  腐男子マスターの俺には、分かっちまいました!  まったく、これはあれだな。  双子が構ってくれなくなったから、会話に潜り込んできたヤツですね。  それも、殺そうとしてたとわいえ、このヤクザ顔の俺に抱きついているもんだから、嫉妬しちゃったんですね?  言葉で言えば良いものを……無口ワンコの不器用さ、堪らん!!!  おまけに、俺に抱きつくことで、双子の嫉妬心を煽ってやがる……  見ろ!  この大きな瞳が、ワンコをじっと見つめているじゃないか!!  なんか凄い眼力で、見つめていると言うよりは、睨んでいる……みたいに見えちゃうが……  まぁ、俺にしちゃ全てデフォだ!  アホだ。  有栖川の眼前で起きていることは全てお手製の腐ィルターを通され現実を現実として受け入れる事が困難になっていた。  
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