新米書記の日常 双子と会長おまけのワンコ

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 腐ィルターを通された現実より、有栖川はこの双子とワンコのイチャイチャを成熟させようと、頑張ることを心に決めた。  それならば……  モブ代表  有栖川(ありすがわ) (けい)  一肌脱ぎましょうー!    有栖川は自分の肩に頭を乗せるワンコの頬を両手で包み、グイッその顔をこちらに向ける。自分も顔を向けることで、至近距離にワンコの顔があった。  うぁ……  近くで見ると鼻筋通ってるし、眉毛整ってるし……目尻綺麗……  カッコええ〜〜  ニヤけてしまうのを引き締めようとするが、今回はヤクザ顔ではいけない。嫉妬を煽るなら、普通の笑顔を向けなければ。  意外と普通の笑顔ってむずいんだよなぁ  ワンコの顔を固定させると、ニッと歯を出して笑みを浮かべた。 「東先輩、何かお礼しましょうか?」  ヒマワリでも咲かせるような弾ける笑顔。いつもの有栖川では考えられないギャップがその場にいる3人をのみこんだ。 「……ツツ‼︎」  目の前で当てられた東は、いつもの穏やかな性格から、カチッと何かスイッチが入る音がした。  ハッ  少し距離があった双子が、その魔法から現実に帰ってくる。そしてこの状況を作り出した有栖川を見上げた。 「「ちょっ!? アリスちゃん!?!?」」  おっと、2人して怒りでお顔が赤くなってしまっている。さすがにキモすぎたか……  モブ攻めも好きだけど、やっぱ自分は違うんだよな〜  それに、俺は腐男子だけど、ノンケだし。  有栖川がまた迷推理をしていると、東が自分の頬に添えられた手に片手を添える。もう片方の手で、逆に有栖川の頬に触れた。  ビクッとくすぐったさに有栖川が震える。その慣れてない仕草が、東の隠れた嗜虐心を煽っていた。 「…有栖川……本当?」  あれ?  突き飛ばされると思っていたけど、なんか顔がさらに近づいてくるような……しかも真剣……  え、あの、唇ついちゃ……  じわじわ近づいてくる綺麗な顔。頬に添えられた大きな手はいつのまにか後ろへ移動し、離れようとする有栖川の頭を固定している。  東が目の前の美味しそうな唇へ、噛みつこうとした時だった。 「「ダメダメダメ‼︎‼︎ アリスちゃんから、早く離れて‼︎ お礼とか、絶対だめだから‼︎ この狼にいっちゃだめ‼︎」」  ドーンッと  先程有栖川に突撃した時のように、双子がもの凄い勢いで2人の間に割り込んだ。そして、一定の距離をとらされる。 「…………」  ワンコが無言のまま双子を見据えるが、その目にはいつもと違う、冷たい視線を含んでいた。しかし、双子も負けじと同じくらいの気迫を出して睨み返す。  そして、有栖川は明後日の方向を見ていた。  やっぱりね〜  ちょっとタイミング遅かったけど。まぁ、多分キモくて動けなかったのだろう。  それに、チビちゃん!  狼って言いましたね!!  俺は聞き流しませんでしたよ‼︎  設定の世界だけかと思っていたが、双子はすでに知っているのか!?!?  もしやこれは……  ポワポッ 「「ちょっと、アリスちゃん聞いてる!?」」  明後日の方向を見つめる有栖川の体を双子がゆさゆさと揺する。その衝撃で開きかけた妄想劇場の扉がバタンと閉じた。  ちっ  邪魔されたか……  まぁ、今日はネタが大量だったからいっか……  それに書記のお仕事も始まったばっかだし……  これからもっとウフフアハハな展開が……  妄想と期待が膨らんだ有栖川は、3人に向かってギラリした視線を向ける。 「有栖川……顔、こわ……」 「………」  とりあえず、ワンコに殴られなくて良かった〜
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