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プロローグ
Q.「自分は人間なのでしょうか?」
自分には人間の営みというものが見当もつかないのです。
自分は物心がついたころより、母の温もりのことを、ただ抱いてくれた時に生じる物理的な熱だとばかり思っておりました。
そうです――普通の人間であれば、誰しもが一度は感じるであろうものを、自分はこの歳になっても、一度たりとして感じたことがないのです。
つまり、自分には人間の感情、営みといったものがいまだに理解できていないのです。
他者と同じ時間を共有することはできても、同じ感情を共有することは決してできない――そんな自分の本質に気づいたのは10代も半ばになってのことでありました。
それはあまりにも遅すぎ、自身の性質が周知されていてもおかしくない状況でしたが、幸いにも不信感を抱いている人物はまだおりませんでした。
しかし、このまま何もしなければいずれバレると思いましたので、本質を見抜かれることのないよう、お道化を演じることにしたのです。
馬鹿で間の抜けた、他人にとって取るに足らない存在であり続けることが、自分にとってできる唯一無二の手段でありました。
自分は死ぬまでお道化を演じ続けるのです。
そうです自分は✕✕✕✕なのであります。
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