慈愛の雨は今日も降る

ザーザーと天から降り注ぐ雨はやまない。

傘の上で、雨粒がひとつひとつボタボタと跳ねる。弾けるようにして、雫が辺りに飛び散る。

雨の日特有のじめじめと湿気た空気は己の心に不快感をもたらし、沈んだ気持ちをより落ち込ませる。道端に花を咲かせる綺麗なはずの紫陽花も、宵闇に呑み込まれて消えていくような気がした。

この道に街灯はない。月は雲に隠れ、光のない雨の夜。

更に付き纏ってくる罪の意識といったら。くらくらして頭が狂いそうになる。

強い風が吹いた。雨の嵐が少年を襲う。雨水に晒され、羽織っていた外套が濡れて身体に張り付く。夜と雨の冷たさが身に染み込む。慈愛などの美しい感情は微塵も感じさせない、そんな夜。

それでも進まずにはいられない。いや、進まず、ではなく逃げず、か。

少年は濡れて汚れた靴で、水溜まりにお構いなく歩き出した。