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文潮社編集部の一角で、三人は色めき立っていた。
英藝新人賞の受賞が決まったとの連絡を受けたのだ。
「まさか、俺たちの合作が受賞するなんて。冗談で始めたことなのに、信じられない」
「賞金100万円は俺に貸してくれないか。嫁に言えない借金があるんだ」
「冗談なもんか。俺たちプロの編集経験をつぎ込み、新人賞の傾向と対策を十分に練って書いたんだ。受賞は当たり前と俺は踏んでいたよ」
「ライバル社の賞だ。うちの会社、怒るだろうな」
「会社にも借金があるんだ」
「ペンネームだし、作家活動はリモートで全部済む。大丈夫、ばれねえよ」
「それだ。女の名前で出しただろ。もし、おっさん三人って分かったらまずくないか? しかも編集者だ。下手したら八百を疑われかねない」
「100万円を俺に……」
「受賞を前提としてこの計画を立てたんだ。大丈夫、手は打ってある。先月から、赤坂で見つけた超美人と同棲してるんだ」
こうして、世界初の猫作家、柏木櫻子がデビューした。
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