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「僭越ながら、わたくしが教えて差し上げましょう。4,044万キロトンです。ちなみに今年は昨年より188万キロトン減っております。ここ数年、貴国の黒麦は100万キロトン単位で減産傾向にあるのはご存知かしら。宰相閣下にお伝えください。天候等の明らかな理由がない限り、何らかの原因があるはず。ご留意されたほうがよろしいかと」
「……はい」
宰相の息子は、話の半分も理解していない顔で頷いた。
エリーゼの美しい眉が、イラただしげにあがる。
ほとんど理解してないのね、このボンクラ息子が。
「貴方との時間は双方において益がありません! 次の御方!」
―― 近年
ルーベシランの謁見の間では、婚姻申込者に対するエリーゼの棘あり毒ありの口撃が、日常化していた。
婚約者などできるはずもなく、父は玉座にて頭を抱え、母である王妃は誇らしげに微笑んでいた。
ルーベシランの城下では、こんな噂がささやかれる。
「なんでも行き遅れになっちまったらしいぜ。自分より賢い者にしか嫁がないんだとさ」
「そりゃあもう、賢者様でも現れない限り、一生独身宣言したも同然だねえ」
「キレイな姫さんなのにねえ、でもまあ、知識の泉がよその国に行かなくて、王妃様は安心してんじゃないのかい」
「セレスティーナ様はそうだろうけど、陛下がなあ」
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