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このままでは、国王夫妻の夫婦喧嘩という、エリーゼにとっても周囲の人間にとっても、もっとも厄介な問題になりかねない。
この場を「夫婦円満」に解決するには、エリーゼが妥協するのが一番である。
「母上、いつもわたくしを擁護してくださり心より感謝いたします。しかしながら、たまには姫らしい息抜きも必要とおっしゃる父上の御言葉にも一理あるかと存じます」
「おおおっ、エリーゼ!」
愛娘から久々に肯定された父王は歓喜し、王妃も溜飲を下げた。
「エリーゼがそういうのなら……反対はしませんわ。そうね、久々の夜会ですから、エリーゼの銀髪に似合う、あたらしいドレスでも作りましょうか」
「それはいい考えだ、セレスティーナ! さて、どんな趣向の夜会にするか、宰相たちとじっくり話し合わねば!」
これにて、厄介事は未然に防げたが ――
わが国の宰相と父上は、いったいどういった思考で、このような夜会を思いつくのだろうか。不思議でならない。
宮殿の大広間に漂う甘ったるい香りに、クラリと倒れそうになりながら、エリーゼは後悔に襲われていた。
やっぱり、話し合いの場に同席するべきだったわ。
「麗しい姫よ、どうぞ!」
まったくもって、いらない。
どこぞの王子が差し出すヘンテコな花を受け取りながら、エリーゼはうなだれた。
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