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馬の話
いい一日だった、そしてこの話には少しだけ続きがある。
倉橋さんから「今度はわたしにご馳走させて」と連絡がきて次の週末も一緒することになって、今度は女性らしいチョイスの洒落たイタリアンでまた楽しい時間を過ごすことが出来た。
それからも映画だとか公園だとか美術館だとかで一緒に過ごすことが増えて、その後、僕が思い切ってした告白を受け入れてもらって今は付き合っている。
先輩からは本当に連絡があって、やはり快晴のとある日曜に一緒に例の競馬場で観戦した。僕は当然完敗だったけど、先輩が洒落で勝った馬券が本命が落馬して後続も巻き込まれるアクシデントのおかけで大当たりして、その夜は二人でしこたま呑んだ。
仕事も以前ほど辛くは感じなくなった。
今は彼女として側にいてくれる洋子さんに聞いてみた。
「あの、昔話で、微妙だなと思ってたものが、後でどんどんいいものに変わっていくのってなんていうタイトルだっけ」
「えーっと、『人間万事塞翁が馬』じゃなかった?」
…『わらしべ長者』だったと、話の途中で思い出したんだけど。そっちのことわざのほうか、渋いな。
しかし、なるほどなぁ。
あの日、スッカラカンになってもいいつもりで賭けてたけど、本当に負けてたら彼女と会っても誘えなかったし、大勝ちしてたら払い戻しに時間がかかってすれ違えなかったかもしれない。
もし、出会えてたとしても、手元にお金があったらその時は今の仕事がキツいという話を素直に出来なくて、洋子さんが自分を気にかけてくれるくれることも多分なかった。
本当に何がきっかけになるかわからない。
毎日が辛くてどうしようもない馬の骨だった僕が、色々なものに助けられて、少しだけ前を向けるようになった。
けど「塞翁が馬」なら、次はつまづかないように慎重にならないといけないな。今の僕は結構しあわせでなんだか調子にのってしまいそうだから。
完
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