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「はい……ありがとうございます。」
ペコリと僕に向かって頭を下げるなほ。これじゃあ仕事の上司と部下の時みたいで、ちょっと困る。
「そうじゃなくって、こういう時はなほに「傍にいる」って言って欲しいかな。」
そう言って彼女をソファーに座らせて、僕もその隣に座る。なほは緊張しているのかちびちびとコーヒーを飲んでいる。さて、これからどうしようか……?
もともとなほは良く喋る方じゃない、彼女と二人こういう静かな時間は慣れてはいるけれど。
なほがコーヒーを飲み終わったので、空のカップを受け取る。
「「あの……」」
どうやら僕もなほもずっと話しかけるタイミングを探していたみたいで、綺麗に声が重なった。
「何を言おうとしたの、なほ。」
「いえ、神無さんこそお先にどうぞ……」
何というか、僕はもういい年なんだけど。それなのに学生みたいな初々しい恋をすることになるなんて思いもしなかったな。
「今日本当にここに泊っていくの?香津美さんのいるホテルか家に送ってもいいんだよ?」
ここに連れてきたのは僕の都合もあったから、無理に彼女を引き止めるつもりはなかった。
僕たちはキチンと婚約という形で許しを貰っているし、2人の関係を進めるのを急ぐ必要はないと思ったから。
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