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「お邪魔します……」
部屋の鍵を開けて僕が中に入ると、続けて入って来るなほ。キョロキョロと周りを観察していて、独身男性の部屋に興味津々な様子。
見られて困るものはないと思うけれど、こんなに真剣に観察されるとちょっとだけ恥ずかしかったりもするね。
あっちでキョロキョロ、こっちでキョロキョロ。そんななほの行動も僕には可愛らしくみえるんだけれど……
「なほ、とりあえずソファーに座って?コーヒー淹れてくるから。」
彼女をソファーに座らせて僕はキッチンへ。コーヒーメーカーで二人分用意してなほの待つリビングへ。
「何をしてるの?」
なほは僕の本棚の前に立っていて、何かの本を取り出して見ているようだ。
「神無さん、小児科医の夢……本当に良かったんですか?」
ああ、彼女が持っているのは僕が学生時代に買った医学書か。結局この年まで捨てることが出来ずそのまま持っていたんだよね。
「そうだね、でも僕にとってなほは比べ物にならない大切な存在なんだ。だから、父に言った言葉は後悔してない。」
君がいなければ僕はきっとずっと操り人形のままだったと思う。君と会えたことで、僕の世界が変わった気がしたんだ。だから……
「君が傍にいてくれることが、僕の一番の望みなんだ。」
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